どこまでも続く白のひろがりは
何にも染まらず、静かに息をしていた。
それは自由のようでいて、
すべてを包みこむ、
やわらかな無音でもあった。
風のすき間から、小さな声がこぼれる。
となりでつぶやいたその響きは
白の世界にそっと溶け、
淡い輪郭だけを残して
遠くへ流れていく。
…この先には、
どんな景色が待っているのだろう。
ひとつは、透きとおる氷の道。
凍てつく静けさの中で、
自分だけの呼吸がくっきりと浮かび上がる。
邪魔のない孤独は
ときに優しい。
もうひとつは、芽吹きの気配。
土の奥からやわらかな色が立ちのぼり、
まだ見ぬ春の足音が胸をたたく。
閉じていた扉の前に、
光がそっと立ち止まる。
どちらへ向かうのか。
あるいは、
まだ向かわなくてもいいのかもしれない。
白の真ん中に立ちながら、
私はこれから訪れる景色の気配に
そっと耳を澄ませている。
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声とことばの処方箋


