ことばの処方箋:白の境界線

白の境界線 声とことばの処方箋

どこまでも続く白のひろがりは
何にも染まらず、静かに息をしていた。

それは自由のようでいて、
すべてを包みこむ、
やわらかな無音でもあった。

風のすき間から、小さな声がこぼれる。
となりでつぶやいたその響きは
白の世界にそっと溶け、
淡い輪郭だけを残して
遠くへ流れていく。

…この先には、
どんな景色が待っているのだろう。

ひとつは、透きとおる氷の道。
凍てつく静けさの中で、
自分だけの呼吸がくっきりと浮かび上がる。
邪魔のない孤独は
ときに優しい。

もうひとつは、芽吹きの気配。
土の奥からやわらかな色が立ちのぼり、
まだ見ぬ春の足音が胸をたたく。
閉じていた扉の前に、
光がそっと立ち止まる。

どちらへ向かうのか。
あるいは、
まだ向かわなくてもいいのかもしれない。

白の真ん中に立ちながら、
私はこれから訪れる景色の気配に
そっと耳を澄ませている。

 

▶ほかの処方箋はこちらにそっとまとめています。
声とことばの処方箋

タイトルとURLをコピーしました